週末の薬指

ぎゅっと抱きしめられて、耳に落とされる甘い言葉。

私を引き付けてやまない言葉が私の心に染み入って、私の全てがどんどん瀬尾さんに取り込まれていくように感じる。

私の唇に重ねられた瀬尾さんの唇の温かさと、背中を撫でてくれる指先の心地よさに酔いながら。

『やっぱり、今日は帰れない』

そう思った。

そして、その甘やかな時間に囚われて、瀬尾さんに夢中になりながらも、どこかに違和感も覚えていた。

瀬尾さんが零す言葉の中にある、何故か気になるニュアンス。

瀬尾さんは、一体、私の事をどこまで知っているんだろう……。

「花緒、ほかの事考えるな。今は俺の事だけを考えろ」

気持ちがよそ見している私に、額と額をくっつけて、睨みつけるような瀬尾さんの瞳。

「俺だけが、花緒にやられてるなんて、むかつく」

悔しげにそう言い捨てると、後頭部をぐっと抑え込まれて。

深く激しいキスが始まった。

何度も何度も角度を変えて、舌を差し入れる強引さに朦朧としながらも、それが心地よくて嬉しくて。

気付けば、私からも瀬尾さんに負けないくらいの深いキスを返していた。