週末の薬指

思わず出た私の言葉に、シュンペーのお父さんは大きく目を開いた。

瞳によぎるいくつもの色が、彼の思いの複雑さを表しているようで、その先を聞く事が怖くなるけれど、突然出てきた母の名前に、私の感覚すべてが反応し、答えを求めている。

混乱する気持ちのまま傍らのおばあちゃんを振り返ると、私の身を守るように寄り添い、じっとシュンペーのお父さんを見入っていた。

それまでの不安や緊張感は既に消えていて、代わりに見えるのは落ち着きと諦め。

そして覚悟。

普段からおばあちゃんが見せる強気な表情がそこにあった。

しばらくの間、誰もが混乱して何も言えないままでいたけれど、その沈黙を破ったのもおばあちゃんだった。シュンペーのお父さんに向き直ると、小さく息を吐いて。

「昔もお兄さんと一緒でいい男だったけれど、今でも艶のあるいい男だね。
……そうだよ。この子は、花緒は……紅花の娘ですよ」

「じゃ、じゃあ、花緒さんは……兄さんの……」