週末の薬指

「あ、父です。今日は何故かこのパーティーに参加したいって言って顔を出したんです」

父親の隣にいるせいか、どこか気恥ずかしそうに顔を赤らめながら、シュンペーはお父さんを紹介してくれた。

仕立ての良さそうなスーツを余裕で着こなしている長身の男性は、立っているだけでその場の視線を集めるオーラを持っていた。

私とおばあちゃんに気付いて優しく微笑むと、

「息子がいつもお世話になっています。社内で人気のある先輩に仕事でお世話になっていると、いつも自慢げに話してますよ。……確かに、隼平が自慢したくなるのもわかるな。俺ももう少し若かったら……」

「父さん、何言ってるんだよ」

「は?いや、いつも話してる先輩がこんな綺麗な人だとは思わなかったからなあ。隼平の婚約者の千絵ちゃんもかわいいけど、木内さんもいいよなあ……」

「だから父さんの好みは聞いてないって。……ほら、木内さん固まってるし」

焦りながらお父さんの話を遮るシュンペーは、小さくため息をついて頭を下げた。

「気に障ったらすみません、木内さんは親父の好み、どストライクみたいです。まあ、木内さんのように綺麗な女性を目の前にしたら誰でも見つめてしまいますけどね」

肩を竦めつつ、お父さんの腕を軽く叩く仕草からは、呆れた気持ちと、そんなお父さんの様子に慣れてる日常がうかがえて何だかうれしくなった。

きっと、シュンペーとお父さんはかなり仲がいいはずだ。

じゃなきゃここまで軽口を言い合ってるわけもないし、わざわざお父さんがこの場に顔を出すわけもないし。

「あの、木内花緒です。シュン……いえ、春山くんにはいつも助けてもらっています。仕事もできるし見た目もいいし、社内でも評判の男性ですよ」

私がそう言って笑うと、シュンペーのお父さんはしばらくの間私をじっと見つめて

「あー、どこかでお会いした事ありませんか……?」

それまでの明るい口調とは違う、低い声で首を傾げた。