週末の薬指

ははは、と笑いながらの言葉は半分冗談だけど、半分本気。

やっぱりかなりの家柄の息子だと聞くと、それなりに考えて見てしまう。

今着てるスーツもいくらするのかとか考えちゃうし。

「でも、シュンペーが頑張り屋でいい男だってよく知ってるから、大丈夫だよ……多分」

そう、それが基本。

シュンペーの事を大好きだから、たとえAホテルの御曹司でも仕事をしていくうえでは何も変わらない。

……と思う。ふふふ。しばらくは混乱するかもしれないけれど、ま仕方ない。

あまりにも有名なホテルの御曹司、戸惑うなという方が無理だもんね。

「で、お父さんにお願いしてここに入れてもらったの?」

「あ、はい。木内さんの晴れ姿を僕も見たくて、父から社長にお願いしてもらって、こっそりと入ったんです」

恥ずかしそうに笑うシュンペーは、年よりも若く見えて、どこか子供っぽい。

とはいえ、見た目が整っているからこの場にいても何人かの若い女の子からの視線も集めている。

仕事もできるし家柄もいいし、無敵だね。

ようやく結婚を承諾したという彼女とも順調そうだし、もうすぐ父親にもなるし。羨ましいくらいに幸せそう。

「ありがとうね。私の晴れ姿なんてこの程度だけど、最初で最後の社長賞だろうし、お祝いしてちょうだい。……あ、私の祖母です」

それまで私たちの会話を黙って聞いていたおばあちゃんを振り返ってシュンペーに紹介すると、シュンペーはいつもの人懐こい笑顔で頭を下げた。

「初めまして、春山隼平です。本日はおめでとうございます。いつも先輩の木内さんには色々と教えていただいてます」

「あ……ありがとうございます。花緒の祖母です。……春山さんは、Aホテルの社長の息子さんで」

「あ、はい、そうです。と言ってもホテルの仕事は兄が引き継ぐので僕には関係ないんですけどね」

「……そう、息子さん」