週末の薬指

「シュンペー、あのさ……」

お店の予約がどうの、最終人数はどうだの。何やらぶつぶつと口にしながら考え込むシュンペーにはもはや私の声は届かなくて、今更私がどう言っても週末の予定は決行されそうだ。

はあ、と大きく息を吐いて、椅子の背もたれに体を預けた。

会社に来てから大して時間は経っていないのに、今日一日分の疲れが既に私を覆ってしまったような気がする。

どっと背中が重くなったような……。

社長賞受賞は確かに嬉しいけれど、あー、やっぱり今日の食事会で悠介に何か言われるかもしれないと思うと憂鬱だ。

いっそ体調悪くて欠席とか言ってみようかな……。

ちらりと課長を見ると、私の受賞を聞きつけたらしい他部署の人からのお祝いやからかいの言葉に嬉しそうに答えていた。

まあ、自分の部下が受賞となれば嬉しいだろうなあ。

課長の今後の昇格にもいい影響が出るだろうし。

そんな課長の嬉しい気持ちをそぐような事は言えないか。

となると、やっぱり行かなきゃいけないか。

諦めて仕事に気持ちを切り替えようとした時。

「あ、今日の食事会って、家族も同伴させていいらしいですよ?」

シュンペーが思い出したように呟いた。

「弥生さんが言ってたんですけど、社員が仕事に打ち込めるのは、家族の支えが大きいって社長の信念があるらしくて、いつも受賞を祝う食事会には家族を呼んでいいそうです。夏弥さん呼んだらどうですか?」

「え?家族……じゃないもん。……まだ」