週末の薬指

「そうですよ、社長賞受賞を聞いて、早速社内にメール回ってますよ。今のところ参加者は30人以上だって言ってました」

「さ、さんじゅう……。それって大げさすぎない?私、普段そんなにみんなから慕われてる気もしないんだけど」

シュンペーの言葉に驚いて、そして信じられなくて、手にしていたボールペンを思わず落としてしまった。

そんな私にシュンペーは苦笑しながら。

「慕ってる人も多いですけど、熱烈なファンだと公言している人も多いんですよ。見た目が整ってるってのもあるんですけど、仕事は確実だし丁寧。知識も豊富だから何を聞いてもすぐに求めている答えを返してくれる。そしてそれをひけらかさないし自慢しない。
後輩には優しくて先輩に対しても言わなければならない事はちゃんと言ってくれる。
そんな木内さんの直属の後輩だっていうだけで、俺をうらやましがる社員も少なくないですよ。
ま、『いいだろー』って返してますけどね」

「……」

シュンペーが今言った言葉は事実なんだろうか。

私の事を話しているとは思えない。

見た目が整ってるって?そんなの嘘だ。

今までそんなこと言われた事ないし。

平凡な容姿だと思うんだけど。

「あまりに綺麗すぎて何も言えないんですよ。高嶺の花なんです、木内さんは。
弥生さんだって綺麗だから、二人並んだところを見るとその日いい事があるって社内では言われてます」

「はあ?」

「ま、信じないでしょうけど、そうなんです。だから、僕がさっき言った事は真実だと受け入れて週末のお祝いにはちゃんと参加してくださいよ。あ、夏弥さんも呼んでいいですよ。いっそ結婚報告もしちゃえばお祝いも倍です。……あ、これいいですね。夏弥さんにも声かけてみようかな。あー、言ったら何が何でも来てくれそうで笑えるな……」

思い出し笑いのように、くすくすと笑いながら、シュンペーは一人で自己完結。

私の気持ちをくみ取るつもりなんてまるでないように自分の気持ちだけを言い切っていた。