週末の薬指

会議が終わったのはお昼休み直前で、終わった途端席急いで会議室を出た。

さっき、あれだけ厳しい言葉を言ったんだから、悠介が再び声をかけてくることはないと思う。

それでも、悠介の姿を見るのが嫌で、さっさと会議室を後にした。

同じ部署に属しているとはいっても、研究グループが違う私達は違うフロアで仕事をしている。

同じプロジェクトに召集されることでもない限りは一緒に仕事をすることもない。

けれど、今日みたいに会議や何かで顔を合わせることを拒む事はできないし、接点を全て断つなんて不可能。

きっとこれからも、社内で会う事はあるんだろう。……やだな。

小さくため息をつきながら自分の机に戻ると、席を空けている間に積まれていた書類がどんと目に入る。

今日も残業だな……。

そう呟いて苦笑いした。

席について、とりあえず手元の書類に手を伸ばした途端、向かいの席の後輩が顔を向けた。

「木内さん、お昼一緒に行きません?」

「お昼?……あ、お給料日前でおごって欲しいの?いいけど、そんなに高いのはやめてね。向かいのビルのランチくらいならOKだよ」