「『ミーナ』」


ジンは女性の肩に手を掛けて、ひどく穏やかな表情で優しく語りかけた。


「『少し待っておいで、僕はまだやるべき仕事が残っている』」


「………」



嘘でも宜しい。


どうせ彼女が愛し、愛されていると勘違いした西洋人の大佐はもう彼女の前には現れない。


騙すことに今更嫌悪など感じない、そう生きてきた人種だから。




「『仕事が終わったら、君を迎えに来るから』」



「…はい、はい!
ミーナはいつまでもお待ちしております旦那様!」



ミーナは大きな瞳に希望をたくさん抱え込んで、本当に嬉しそうに喜んだ。


それを哀れみの目で見つめて、レインは改めて思う。



『残虐な人』。






「行くぞ」




ジンは再度ヴェールを翻してミーナに背を向けた。



「はい」