砂漠の水車




「見ろ、穴がある!」



「うぉあっ!!」



突如肩に重みがのしかかり、背中に暑苦しい熱がしみた。


誰かといえば、追いかけてきたらしいアルファなのであるが、ジンの肩越しに指をさして、何故かアトラクションでも見つけたかのようにはしゃいだ声でいる。



「お前…降りろこの大食漢、重いんだよ!!」


「何言ってるんです、僕体重は65しかありませんよ」


「精神的に100キロ背負っている気分」


「そんなことよりほら、穴!」



アルファが指さす方は、一見して、比較的形が無事な一軒の家屋。


穴と言われて探してみれば、家屋の向こうの方に半円だけ確かに穴っぽいのが覗ける。


まさに穴、落とし穴でも掘ってんのか。


ナポレオンはここにはおらぬぞ。




「良く見てください、土が吐きだされてますよ、誰かいるんですよ」


「誰かいるって誰だよ、英軍兵か、帝軍兵か、それとも敵軍の生き残りか」


「めんどくせえから行ってみようぜえ」




ヴェールを肩に掛けてのらりとした足取りをし、ヒツギが先陣切って穴へ向って行った。



「…なにか、いいことを聞ければいいんだが」


「なにをだよ。
聞くことなんて、お、おい」




隊長の制止も聞かず、ヒツギとグレンは穴の傍まで歩み寄った。