「真冬一!!」


私はお母さんの声で、いっきに起き上がった。


ヤッバ!


昨日、帰ってそのまま寝ちゃったんだ!


「9時!?」


撮影が10時半から…。


ここからスタジオまで30分…。


急がないと!


「真冬!もっと静かに!」


「ごめんなさい!時間がないの!」


「真冬。気をつけろよ?」


〝父さん〟の言葉に、口の端が上がる。


「…俺は夜桜だぜ?そう簡単にヤラれないさ」


俺は夜桜になると、男言葉になる。


いわゆる夜桜モード的な?


「あのなぁ…」


「ヤッバ!時間ねぇ!!父さんまた!行ってきます!」


「…女だから気をつけろって意味だったんだが…」


「真冬は自分の事には無自覚だし、言っても分からないわよ?」


「だな」


遅刻の事ばかり考えていた私は、両親のそんな話しを知る事はなかった。