「学校に、行きたい……」

静かなその声に、彼女は頷き、足を進める。

学校の近くにある避難所に行けば、同じクラスの子たちもいるはず。
少しでも彼らに会って元気を出さないと、この子は……。

彼女の思いが、彼の頭に響く。

死なせない。絶対に、死なせたりなんてしない。〝私〟のことを素敵だと言ってくれたこの子だけは、絶対に守ってみせる。

彼女の必死さが、心の中に勢いよく流れ込んできた。

「なっ……」

目の前に広がる風景に、彼女は言葉を失った。黒髪の少女もそれに気付き、顔を上げる。

「――……」

声が出ることはなく、少女はただ目を見開けた。彼もまた、二人同様に言葉を失う。

ひどい。

それしか、思うことができなかった。
大半が崩れ落ちてしまった、二人の思い出が詰まった建物。そのすぐ傍に積み上げられている、人々の死体。それは見るも無残な姿だった。

「地下避難所が、見つかってしまったから」

彼女の声は震えていた。

敵は〝アレ〟を探し回っているに違いない……。だから地下避難所を見つけては、こんな……こんな残虐なことを……。

胸の中が締め付けられる。その苦しさに、思わず青年は胸元を握り締めた。