( そんな仕組み……嘘、だよね……? )
脳裏に響く、か細い声。
〝彼女〟は自分が偽物(コピー)だということに耐え続け、そして〝私(コア)〟のことを素晴らしいと言い続けた。
――世界の仕組みを、知るまでは。
( こんな歪んでいく世界なんて、存在しなければよかったのに! )
彼女は否定した。私の〝全て〟を。素晴らしいという、その言葉を。
そして彼女は――……。
少女は足を止める。強く、手を握り締めた。
「……私が」
ああ、どうか彼は、
「少女を、殺したの」
世界の仕組みを、受け入れることができますように。
「私が異常者を……唯一私のことを覚えている人を……殺した」
青年は振り向き、彼女を見上げる。
「……その子は、自ら命を絶ったんじゃ……」
「ええ。けれど、私のせいなの……」
お願い、と言いながら、少女はおもむろに階段を下りる。
「お願いだから、どうか……どうかあなたは、死なないで」
彼の片腕を掴み、彼女は言う。涙ぐみ、言う。
「ああ。約束するよ」
少女の手を握り締め、力強く青年は頷く。


