「アイツには戦場に出てほしくないんだ」

それは家族であれば必ず願うことだろう。しかし20歳になれば必ず行かなければ行けない。
ならばせめて、その時が来るまでは地下で居てもらいたい。
それは青年が心から願うことだった。

「……やっぱり、こんな世界なくなってしまえばいいのよ。ねえ、そうでしょう?」

小さく微笑む彼女はあまりにも悲しげで、けれどどこか意味深であるその微笑みに、青年は気を取られた。

「ねえ、聞いているの?」

その声に、彼は我に返る。

「世界が消えてしまえば戦争もなくなるけれど、それは同時に俺たちも消えることになるんだよ」

息をついて、そうね、と少女は言った。

「まあそんなこと、現実的じゃないから考えるだけ無駄さ」

「…………」

黙り込んだ彼女に、彼は怪訝そうな顔をする。