寂然たる街中に伸びる、二つの影。月は薄雲に隠れ、辺りも少し暗くなる。

「……前に話した〝二人の少女〟の話、覚えている?」

その声はいつもより小さめだった。ああ、と青年は言う。少女を一瞥したが、俯いていて、顔は見えない。

「生き残った〝少女〟は、私なの」

「……ああ」

彼女の服装。そして〝消えることのない存在〟を知り、大方そうだろうと、彼は思っていた。

「……そしてあの子も――死んでしまった少女も、あなたと同じ、〝異常者〟だった」

少女の声が震えているのに、青年は気付く。

「……本当、異常者は可哀想ね」

そんなことを呟く彼女を見て、繋いでいる手に力を込め、彼は静かに口を開けた。

「〝異常者〟のことを、教えてくれないか?」

他の者と違って、何が〝異常〟なのか。そして、どうして君は〝異常者〟を哀れむのか。

「……この世界に存在するあなたたち人間(コピー)は、記憶を操作されているの。私が誰かと出会い、関わっても、次の日になればその誰かの記憶の中から、私の存在は消えている。そういう仕組みになるように、あなたたちは創られているのよ」

誰も、私のことなんて覚えていない。いくら楽しい時を共に過ごそうと、その記憶の中に、私はいない。