「その無人島はね、世界の中でも大切にされていた島だった。それを攻撃してしまったせいで、ついに戦争は勃発してしまったの」

「……そう、だったのか」

伏せていた瞳を、彼女に向ける。そして青年は優しげに、微笑んだ。

「ありがとう。教えてくれて」

忌々しい過去を思い出すなんて、嫌だったに違いない。

「……っ」

先ほどとは違う苦しさが、胸を締め付ける。

――ああ、本当に。

「帰ろう」

少女の手を取り、彼は歩き出す。

本当に、あなたは優しすぎる。あなたは私の言葉を全て信じ、何も疑わない。
きっとあなたは、思いもしないでしょう。

戦争を引き起こした〝元凶〟はどの国でもなく、本当は私だということを。