少女と青年は壁に取り付けられた小さな灯りをもとに、薄暗い階段を下り続ける。

「なあ、さっきのあの言葉のことだけど」

前にいた少女はその声に立ち止まり、彼の方に顔だけ振り向く。

( こんな世界、なくなってしまえばいいのかな? )

その言葉の少しした後に、まるで彼女は己を自嘲するかのように小さく笑ったことを、青年は思い出した。

本当は、彼女も分かっているんだ。
いくらそれを聞いたとしても――。

「いくらこの世界がなくなるべきか、そうでないべきかを聞いたとしても、それで世界が変わることはないだろう?」

「……さあ、どうかしらね」

目を伏せながら、静かに少女は言った。
そんな彼女の言葉に、彼は怪訝な顔をする。

「人に聞いただけで世界の未来が左右されるなんて、現実的じゃない」

正論を言う青年に、少女は伏せていた目線を上げた。
ほんの少しの間、二人は見つめ合う。

「あなたが羨ましいわ」

そう言いながら、また前を向いた。