覚めることのない夢の中へと引き擦り込まれる生き物。壮大な青空を奪われ、嘆き俯く植物。

「彼らは地上を捨て、地下に逃げ込んだ。けれど彼ら人間の大半は、すでに消えてしまっていたの」

ひっそりと暮らす人々。生き残った研究者たちは口を揃え、声を上げる。

「〝人間〟は決して絶滅させてはいけない。知恵のある〝我ら〟は、決して消えてしまってはいけない。……だから彼らは、生涯を研究に捧げた」

そして彼らはついに、素晴らしき研究の成果を発揮した。

「何十年もの歳月を重ね、ついに〝もう一つの世界〟を創りあげてしまうほどのコピー技術を、彼らは完成させてしまったのよ」

靡く白銀の髪。冷え冷えとする風が、青年の体を震わせた。

「……こんなこといきなり言われても、混乱するだけよね」

ぽつりと少女は呟く。俯いていて、顔は見えない。

「今日はもう、やめましょう。その方が、あなたにとってもいいはずだから」

心なしか、様子が少し変である。胸元を、彼女は握り締めていた。

「……先に戻るわね。また明日、会いましょう」

顔を見せないまま、青年を横切る。

「さようなら」

なぜかその言葉が、重々しかった。