少し冷たい風が頬を撫でる。

「ん……」

重い瞼を上げると、霞んではいるが、茜色に染まった空が目に入った。

「此処、は? ――っ、痛って……」

体を起こすと頭に痛みが走り、咄嗟に左手で頭を抑えた。
だるさを感じながらふらりと立ち上がる。

茜色に染まる街並み。沈み始める夕陽。
今日の争いはもう終わったようだ。

紫紺の空となっていくまで、しばらく青年はその風景を見つめていた。

「いつかきっと、終わるよな」

この殺し合いはいつか終わって、地下で暮らす人々も出てきて、そしてこの街は、この世界は、きっと再生されていく。

( あなたは―― )

「……え?」

一瞬、何かを思い出す。
今見ている風景に、〝誰か〟の姿。けれどその姿は、ぼやけている。

「今の、何だ……?」

必死に思い出そうとするが、思い出せない。
わだかまりが募っていく一方だ。
小さなため息をつき、じっと目の前にある街並みを眺める。

「……帰るか」

ぽつりと呟いて、背を向ける。

暗くなるまで眺めていたいが、〝暗くなる前にUCGへ戻ること〟と決められているからな。

薄暗く、荒んでいる階段を下りて行く。
辺りが静かなせいか、足音がやけに大きく聞こえた。