「死なないって……」

そんなこと、言い切れる訳がない。
彼女はそんなことも分からなくなってしまうほどに、壊れてしまったのか?

「ねえ、こんな生活、いつまで続くのかしらね」

そう呟く少女の後姿は、どこか寂しげだ。

「此処の地下避難所であるUGCは他と比べて機能が断然良い方だわ。人工的な空も日の光もあって、小さいけれど、家や広場もある。だから今では地下街と呼ばれる理由も分かるけれど、とても良い所とは言えない」

「…………」

「此処のUGCは何よりも兵士を優先してる。戦場に立つあなたたち兵隊のために、軍専用の施設であなたたちは暮らし、毎日食糧を与えられる。だから街の人々は3日に1回、僅かな食糧を与えられるだけ」

唯一地上に立てる時間になろうと、地上を恐れ、なかなか出ようとはしない。
そのため、本物の夕陽すらも、知らない。

何もない中でひたすら争いが終わるのを待ち続けることが、どれほど辛いことか彼はきっと知らない。
生きる意味があるのかすらも分からなくなるほどに、人々の希望が小さくなっているということもね。

「別にあなたを責めたい訳じゃないの。優先される代わりに、兵士は死と隣り合わせの日々を毎日送る。死への恐ろしさを、毎日抱えている。……でも私は、その恐ろしさが分からないから」

「……死への恐怖がないから、陽が昇っていても外に出れると?」

「そうね。でも少し違うわ」

「? 何が違うんだ?」

少女は顔を振り向かせる。

「歪んでしまった世界を見るためよ」

虚ろな瞳の奥に何かが秘められているような、そんな気がした。