少女は焼け焦げた花壇の姿を、少し離れたところから眺める。辺りには何人かの死体が倒れていた。

「敵を撃ち殺し終えた時には、もう手遅れだったんだ……」

ごめん、と掠れた声で彼は言う。

――ああ、きっとあなたは、必死だったに違いない。

血の海となった中、呆然と立ち尽くす青年の姿が、脳裏に浮かぶ。
そっと、彼女は彼の手を両手で握る。

「あなたは何も、悪くない。みんな、〝未知〟のものを恐れるもの。仕方ないわ」

それに、と続ける。握る手に、力が入った。

「咲いた姿を見ることができたから、もういいの」

私は忘れない。あの花の美しさと、儚さを。そして、〝彼〟の思いを。

「でも……」

「カンナがこの場所を見つけなければ、私はきっと、月夜の下誇らしげに咲き誇る純白の花を、永遠に見ることはなかった」

少女は言う。笑みを浮かべ、言う。

「ありがとう。私を此処に連れて来てくれて。カンナと一緒に見ることができて、本当に良かった」

その言葉に、彼は目が潤む。けれど嬉しそうに、笑った。