廃ビルに戻ると、鬼灯がどこからか救急箱を持ってきた。
私は大人しく座り、鬼灯が救急箱から必要なものを出し終わるのを待つ。
「これぐらい自分でできるのに…」
『主様の手を煩わせることなどありません。俺もできるんですから』
「変なところを触ったら殴る」と鬼灯に釘を刺し、私は上着を脱いだ。傷口から流れていた血は止まっている。どうやら傷はさほど深くはなかったようだ。
『一応俺も男ですから、努力はしますよ』
そう言いながら、鬼灯が消毒液を傷口にかける。消毒液が沁みるがそこは我慢だ。てきぱきと処置をしながら、鬼灯が小言をいい始めた。
『主様はもう少し自重なさったらどうですか?』
「これぐらいなら別に平気だよ」
鬼灯がため息をつく。


