百鬼夜行の主



幽side


強い―私は気狐の剣劇を避ける。

空を切る音が私の鼓膜を振動させる。剣劇を避けてもなお、速過ぎるそれは私が目で捉えることしか許さず、反撃の手を打とうにもその速さが私の思考を切り裂いていく。


思った以上に強い―そう思った。瞬間、


『イヤッハァァァァァァァァァァァ!!!』


気狐の狂ったような叫び声が耳を貫く。瞬間、


「グアッ!!!!」


気狐の刃が、私の腕に斜めの傷を作る。傷から、赤が噴き出す。ポタ、ポタ―リズミカルに、機械的に赤が―私の血が地面に落ちる。

落ちたところから地面が真っ赤に染まる。


「クッソ…!!」

私は羽織の袖をちぎり、腕に強引に巻いた。


「野郎ッ…!!」


私は気狐を思いっきり睨む。気狐は嘲笑を浮かべていた。


『やはり、あの脆弱な鬼に守られるような主だな…』


「黙れ…!!鬼灯は…弱くなんかない…!!」


私は真っ赤に染まった地面を蹴り、気狐に斬りかかる。


刀を振り上げた瞬間、


気狐が私の頭を掴んだ。


『消し飛びやがれ!百鬼夜行の主ィィィィィィィィィィィ!!!』


気狐の掌から圧縮された妖気が、放たれた。


痛みを感じるよりも先に、私は宙高く舞った。