百鬼夜行の主



私は刀を抜く。白銀に光る刃の切っ先を「四月朔日」君に向けた。


「…てめぇの名前はなんだ?」


「四月朔日」君が冷笑を浮かべる。


『俺は「気狐」、狐の妖怪さ』


「四月朔日」君―気狐が手を大きく動かす。やっぱり狐の妖怪か―

人間に憑ける奴は霊だけ。なら私の目の前にいるのは「四月朔日君に化けた狐」となる。


『主様、かかりましょうか?』


雪羅が小声で訊く。私は気狐に背を向け、百鬼に向かって叫ぶ。


「お前ら!妖怪狩りだ、好きな分だけ狩ってきやがれ!!!」


百鬼の雄叫びが、響き渡る。私は再び気狐に身体を向ける。


「雪羅、行って来い」


『しかし…!!』


「平気だ、それに…あいつの仇討でもある。お前は巻き込めない」


雪羅が何かを呟いた。私は静かにうなずく。


「暴れて来い、雪羅!!」


『了解です!!』


雪羅の足音が、ゆっくりと遠くなっていった。