幽side
私は袴を着て羽織を身にまとい、髪紐で髪を縛った。
「雪羅、今現在町に現れているのは狐火だけか?」
『いえ、少し前に偵察用の雑鬼から強い妖怪があらわれたとの報告が』
私は刀を抜いた。白銀の刃が妖しく煌めく。その刀身に自分の姿と、後ろにいる百鬼を映し出す。
「…分かった」
私は刀を納めた。そして、百鬼に目をやり、声を張った。
「お前ら!!!」
百鬼たちの表情が張り詰める。状況はもう理解しているようだった。
私は一呼吸おいて話し始めた。
「…色々すまなかった。鬼灯の怪我を思い過ぎてこのような状況を防げなかったこと…主として不甲斐なく思う」
百鬼たちがざわつき始めた。無理もない、動揺しているんだろう。私は話すのを続けた。
「まずは謝りたい。不甲斐ない主ですまない…それと…それでもついてきてくれたお前達…感謝している」
静まり返った廃ビルに、百鬼のざわめきが響く。
瞬間、百鬼の雄叫びが廃ビルに響き渡った。
『後生じゃなくてもついていくぜ!』『主様のためならどこにだって行ってやらぁ!!』『主様は俺らを引っ張ってくれてんだ、ついていかねぇわけねぇじゃないですか!!!』
次々に聞こえる百鬼の声が、私の耳に響いた。
涙が出るほどうれしい。こんなにもたくさんの妖怪が私を慕ってくれたんだ。私はこぼれそうになった涙を拭き、微笑みながら、叫ぶ。
「行くぞお前ら!!!人にあだなす妖怪に容赦はいらねぇ!妖怪どうしの化かし合い。俺らが勝ってやろうじゃねぇか!!」
『『『『『うぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』』』』』
百鬼の雄叫びが、響き渡る。
「行くぞ!!!百鬼夜行の恐ろしさ。思い知らせてやる!!」
私はヤタガラスに乗った。
その光景は、まるでいつの日かを再現しているようだった。