百鬼夜行の主




ブロック塀のうえに立つ四月朔日君の名前を呼ぶ。



しかし、四月朔日君は嘲笑を浮かべながら口を動かす。


『この体の名前、四月朔日って言うのか…しかし、鬼李の娘って言ったけど、つまんねぇな。お前』


四月朔日君が静かに言う。胸の動悸が激しくなる。冷たい、嫌な汗が頬を伝う。

そんな…なんで四月朔日君が…!私の脳内を恐怖に近い感情が支配する。

『…主様。お下がりください』


鬼灯が四月朔日君に向けて刀を構える。


四月朔日君は嘲笑を浮かべるのを止めた。そして、冷たく暗い、殺気のこもった目を私に向けた。


『鬼に守られてやんの…つまんねぇ野郎は嫌いだ』


瞬間、ずぱぁん、と言う鈍い音が私の背後から聞こえた―

目の前にいたはずの鬼灯が―消えた

状況が読み取れず、私は背後を見た。

さっきまであった、整えられたブロック塀が―なかった。
―整えられたブロック塀の代わりに現れたのはまるで巨大な妖怪が殴ったかのようなひびわれたブロック塀と―その中心の赤黒い色に染まった―変わり果てた姿の鬼だった。