ふわり、と大好きな香りが鼻を掠める。
「全部知ってるよ。四月から、ずっと見てきたんだ。君が司に恋をして、それが面白くなくて俺が横取りした。でも、君はちゃんと俺を見てくれた。君からの好意はきちんと感じられた。俺が焦りすぎて、君を急かしすぎて、色々うまくいかなくなっちゃったけど――あのとき、確かに俺は翠葉ちゃんから『好き』って気持ちをもらっていたよ」
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
「謝らないで。君は十分悩んだし苦しんだ。もう楽になっていいよ。もう、これ以上は苦しまないでほしい」
「ごめんなさい、ずっと言えなくて。きちんと返事ができなくて。こんなに長い間――ごめんなさい」
「……答えをくれてありがとう。会いに来てくれてありがとう」
 いっそう強く抱きしめられた。