耳元でトーンを落とした声が言う。
「リィに関してはどっちが良かったのかな……」
 と。
 どういう意味なのか知りたくて、唯兄の顔を見ようとすると、
「おー! 翠葉かわいいなー」
 唯兄ごとお父さんに抱きしめられた。間に挟まった唯兄が、「痛い痛い」と文句を言うけれど、お父さんは放そうとはしない。
「零ー? あまりしつこいと嫌われるわよ?」
 クスクスと笑いながら現れたのはお母さん。お母さんも藤色のワンピースを着ていた。そして、首には金糸で縁取られた深紫のリボンチョーカーをつけている。
「えー? こんなことくらいじゃ嫌いにならないよねぇ?」
「嫌いにはならないけど、狸だとは思ってます」
「どうしてー? 俺はまだそこまでお腹出てないと思うんだけど」
「いや、そういう問題じゃなくて……」