意を決して涼先生の顔を正面から見ると、
「またすぐに会えますよ」
 ニコリと笑顔を返された。瞬間に全身が固まる。
「お忘れではありませんよね? パレスから帰ったら検査、ということを」
 今度は違う意味で全身が固まった。
「……忘れていません」
 ほぼ忘れていたとはとても言えそうにない笑顔だった。
 ふたりの背中を見送ると、
「おっかねぇ……正真正銘司っちのおとんだな」
 唯兄の言葉に振り返る。
「「「それ」」」
 三人の声が重なり、指の先々には藤色があった。
 言いたいことは三人とも同じみたい。