コンコン、とドアをノックする音がし、栞さんが入ってきた。
「夕飯よ」
 言われてすぐにリビングへ移動する。
 だいぶ吐き気も治まってきたので固形物でも普通に食べられそう。
 テーブルの上にはプレートに少量のパスタがよそってあった。
「トマトのパスタっ!」
「そっ! トマトの冷たいパスタ、翠葉ちゃん好きでしょう?」
「大好きですっ! 栞さん、好きっ」
 栞さんによしよし、と頭を撫でられていると、栞さんが不思議そうな顔を私の後ろに向けていた。
 栞さんの腕に絡みついたままそちらを振り返ると、司先輩が驚いた顔のまま静止していた。
「どうしたんですか……?」
「……いや、翠がそんなふうにはしゃいでるところ初めて見たから」
 ……そうだっけ?
「学校でもそれだけはしゃいでいればいいのに」
「……あまり意識してないからわからないです」
「ふーん……」
「それを言うなら、司先輩がはしゃいでいるところなんで見たことないし、それ以前に想像もできません」
「……想像しなくていいし」
 栞さんがクスクスと笑って会話に混じる。