光のもとでⅠ

「秋斗くんにつけられたキスマーク、そんなに嫌だったの?」
「……つけられたときはよくわからなくて、でも、人に見られたり、自分で鏡を見たらどうしても消したくて――」
 それ以上のことは口にできなかった。まだ、そこまでしか思考がたどり着いていなくて。
「そっか……。まずは傷の手当をしちゃおうね。それから、髪の毛をお湯で濡らしたタオルで拭いてあげるわ」
 インターホンが鳴ると、玄関のドアがガチャリと開き人が入ってきた。
「美波さん、救急箱です」
「おっ! 葵くん、サンキュ!」
「……翠葉ちゃん、それどうしたの?」
「はーい、ストップ! コンシェルジュなるもの住人のプライバシーには介入するべからず。用が済んだらとっとと去るっ!」
「……スミマセン」
「あのっ、高崎さん……ちょっと擦っちゃっただけなの。だから大丈夫です」
「……そう? ならいいけど……お大事にね」
 高崎さんはこちらをうかがいながらゲストルームをあとにした。
「あと、もう一ヶ所……」
 美波さんは再び携帯で電話をかけ始めた。
「あ、湊ちゃん? ちょっと教えてほしいの。擦過傷の手当てなんだけど。――了解。湿潤療法でいいのね。――それはまたあとで」
 と、通話を切る。