「そういや、紅葉祭が終わって早々にインフルで入院したってな? もう大丈夫なのか?」
「はい、大丈夫です」
 それがきっかけだったのだろうか……。
 インフルエンザで高熱を出し、数日間は意識が朦朧としていた。
 しっかりと意識を取り戻して自宅に帰ってきたら記憶が戻っていた。
 何がきっかけになったのかはわからない。
 でも、記憶は戻ったのだ。
「先生……」
「痛かったか?」
「ううん、違うの……。私、記憶が戻りました」
 昇さんは針を刺そうとしていた手を止めた。