この階は相変わらずほかの階と比べて少し暗い。
 エレベーターを出てすぐのところにあるロビーは床から天井までのガラス窓でとも明るいのに、廊下はわずかな照明のみ。
「患者がいなけれりゃ、俺が困らない程度についてればいい」
 それが相馬先生の考えなのだ。
 実際に暗すぎて足元が見えないなんてことはないし、困らない程度の照明はついている。
 ナースセンターに着くと、
「先生、ちょっと内線借りまーす」
 唯兄がカウンターに手を伸ばし、
「新棟九階にいる若槻です。藤守さんお願いできますか? ――あ、若槻です。すぐに新棟のエレベーターを八階止まりにしてください、ほか二棟との連絡通路のロックがされていないようでしたらそちらもロックかけてください。それから、非常階段に警備員の配置をお願いします。自分は五分以内に非常階段から下りますので、今から五分後にはそちらのこの階の非常階段のロックもお願いします。話は下に下りたときにします」