『秋斗くん、俺は言ったよね? もう、囲って守って――ってそれだけをするつもりはないって。ストレスだってさ、ある程度は耐性をつけておかなくちゃ。それはこれからの翠葉に必要なものだからね』
「でも、彼女にとってストレスは――」
『ストレスに弱すぎるのも問題なんだよ。少しずつ慣れさせなくちゃ。気分は海に入ったことのない子どもを大海原に放り込む親の心境だけどもね』
 ははっ、と笑われた。
『あ、静の話が終わったようだ。ちょっと待ってね』
 彼女は携帯を持ったまま、膝の上に視線を落とし身動きをしない。
『秋斗、彼女のフォローを頼む。カメラは彼女の見えないところに置いてくれ。明日は挙式の予定はないが、あまりにもひどく緊張しているようならチャペルには行かなくてもかまわない』
「わかりました」
 俺は通話を切るとすぐに部屋を出た。