……逃げる?
この状況よりも、その質問に困っている気がする。
「困ってはいますけど、対処できなくて逃げるほどには困っていません」
その答えがおかしかったのか、肩口のところでクスクスと笑われる。
困ったな、とは思う。でも、逃げたい衝動には駆られない。
その理由は……?
この体勢がひどく馴染みのあるものだから?
小さい頃から蒼兄やお父さんがよくしてくれていたのと一緒。
お父さん曰く人間座椅子もどき。
それに、暗い場所だからかもしれない。
自分がどれほど赤面していようと相手には見えない。
後ろから抱きしめられている分、その人の顔を直視しないで済む。
……背中に人の体温を感じるとほっとする。
けれど、そこに異物を感じるとしたら、香り――。
でも、この香りは深く吸い込みたくなるくらい好き。
「秋斗さんに言われたとおりなのかな……? 少し慣れたのかも」
「なんの話?」
この状況よりも、その質問に困っている気がする。
「困ってはいますけど、対処できなくて逃げるほどには困っていません」
その答えがおかしかったのか、肩口のところでクスクスと笑われる。
困ったな、とは思う。でも、逃げたい衝動には駆られない。
その理由は……?
この体勢がひどく馴染みのあるものだから?
小さい頃から蒼兄やお父さんがよくしてくれていたのと一緒。
お父さん曰く人間座椅子もどき。
それに、暗い場所だからかもしれない。
自分がどれほど赤面していようと相手には見えない。
後ろから抱きしめられている分、その人の顔を直視しないで済む。
……背中に人の体温を感じるとほっとする。
けれど、そこに異物を感じるとしたら、香り――。
でも、この香りは深く吸い込みたくなるくらい好き。
「秋斗さんに言われたとおりなのかな……? 少し慣れたのかも」
「なんの話?」