「でも、どうして急に写真?」
「……俺はまだ翠に会いに行けないから、兄さんに写真を持っていってもらおうと思って……」
「あら、すてきなアイディア! それなら私にも撮らせて?」
 母さんは手に持っていたクッキーを俺に持たせ、カメラを手にした。
「ハナ、待てっ。っ――待てだろっ!?」
 少し気を抜いた瞬間に押し倒され、クッキーの争奪戦が始まる。
 久しぶりに全力でハナと戯れていると、母さんは楽しそうに何度かシャッターを押した。
 もう、なんでもいい――翠が喜んでくれるなら。翠が笑ってくれるなら――。