朝食を持って戻ってきた藤原さんは、トレイをテーブルに乗せると、いつものようにスツールに腰を下ろした。
 身体は起こせるようになったものの、胃のムカムカは完全に引いたわけではなく、朝食を胃に入れる、という行為が受け入れがたい。
 でも、卵豆腐は食べられる気がした。
 それからお味噌汁も。
 塩分は摂ったほうがいい。
 そう思ってふたつに手を伸ばした。
 ほかのもの――ほうれん草の胡麻和えや卵焼き、煮物には手が伸びず、どうしようかと悩んでいると、
「メロンと桃、どっちがいい?」
 藤原さんに訊かれ、意味がわからず首を傾げる。と、
「栞ちゃんが食べれないときに、ってシャーベットを冷凍庫にたくさん入れていってくれたの」
「……メロンが食べたいです」
 すると、藤原さんはにこりと笑ってトレイを下げてくれた。