そこにトレイを持った藤原さんが入ってくる。
「食べられる?」
「……食べます」
「翠葉ちゃん、さっき戻したばかりだから無理はしなくていいよ?」
「いえ……食べます」
 私が元気になればなんの問題もないのだ。
 結論はそうなる。
 なら、食べるしかないじゃない。がんばるしか、ないじゃない……。
 ご飯食べてお薬飲んで、治療もがんばって――元気になるしかないじゃない。
 ほかの方法なんて思い浮かばないもの……。
 ベッドに上がり、テーブルに置かれたトレイに手を伸ばす。
 重湯やお豆腐、スチームされた野菜と薄味のお吸い物。
 何度も何度も口の中で咀嚼して飲み込む。
 それを目の前にあるものがなくなるまで何度も何度も繰り返した。