病室にいた時間は十分もない。
「あの、もしかしてお昼休憩に来てくれたんですか?」
「そうだけど」
 インターハイ前であることも忙しいことも知っていた。
 だからこそ来なくていいと言ったのだけど来てくれた。
 嬉しくて申し訳なくて心の中がぐちゃぐちゃ……。
「……負担じゃないから。そこでうだうだ考えたら怒るよ」
 切りつけるような視線を返され、先輩を見上げる。
 こういう言い方も先輩の優しさのひとつ。
「……ありがとう」
「はい、どういたしまして」
 先輩はそのまま病室を出ていった。