「蒼くん……こういうときはどうしたらいいのかしら」
 栞さんは蒼兄に助けを求めた。
 すると、ギシ、とベッドが音を立て、
「こうやって抱きしめていればじきに泣き止みますよ」
 と、いつものように蒼兄が抱きしめてくれた。
 蒼兄の胸から一定の速度で鼓動が聞こえてくる。
 落ち着こう、落ち着こう、落ち着こう――。
 そう心の中で唱えていると、前にもこんなことがあった気がしてそれを思い出そうとした。 思い出すのに時間はかからなかった。
 秋斗さんが熱を出して仮眠室で寝ていたとき、あのときも心配で何もできない自分が情けなくて、湊先生の前で大泣きしたのだ。
 そのときも、湊先生に抱きしめてもらったな、なんて思い出していると少し冷静になることができた。
 私、小さい子みたいだ……。
 そう思うとすごく恥ずかしかった。