そんなことを考えながら十階へ続く階段を見ていると、
「リィさえ戻りたいって言えば、ここにはいつでも戻ってこられるよ」
「……うん」
 すると、キィ、と音がして十階のドアが開いた。
 階段を下りてきたのは静さんだった。
「翠葉ちゃん、ちょっと上がってこれるかい?」
「はい」
 十階へ上がると、リビングへ通された。
 そして、戸棚の前で静さんが振り返る。
「母に会ってくれるかな」
 と、戸棚を開けると、そこにはお仏壇があった。
 扉を開けなければ普通の家具にしか見えない。
 仏壇の中央に間宮さんと思われる人の写真が立ててあり、静さんが蝋燭に火を灯すと場所を譲られた。
「失礼します」
 お線香を手に取り火をつけ、お線香を立てると、手と手を合わせて目を瞑った。