「実は……ミクリは襲われる前日、つまり一昨日、川村という探偵の事務所に行っていたんです」

「えっ!!」
 これには、その場にいた全員が驚きの声を上げた。

「その川村という探偵を、ミクリは疑っていたようです。私は後で聞いて、彼女を叱りました。するとミクリは、これ以上大切な人に迷惑をかけたくなかった、と言ったのです」


 貴之達は言葉を失った。


「シゲさん……そういえば、川村の事務所内には異常な量の植物がありましたね」

 沢下が、恐る恐る顔をシゲの方に向ける。


「たしか、ユリもあったような……」


 皆、一人の男の存在を、大きく重々しい、黒い闇のように感じていた。