涙が出そうになったのは、貴之の方だった。

 気づかれないように「そういえば」と切り出した。
「なんでおまえ、尚樹には素直について来たの?」

「……手」
「え?」

「差し出してくれた手が、おっきくて、キレイだったから」

「ふうん……、よくわからない理由だな」

「美葉、貴之の手は?」
 冷やかすような尚樹の質問に、美葉がチラッと貴之の手を見て、言った。

「汚い」

「オイ!! 失礼、失礼! そんなこと言っちゃダメ!」
 貴之が久しぶりに大きな声でつっこんだ。



「……でも、好き」



 美葉はそう言うと、貴之の手を握った。