砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

 ああ、と、龍星は思う。
 これは泣けばなんとかなる、と、思っている女の一人だ。

 確かに容姿は悪くなく、こうやって泣いては男に頼り、そのたびに甘やかされて生きてきたのだろう。

「具体的にはどのような?」

 龍星は感情のない声で聞いた。
 出来ることなら今すぐ帰りたい。
 とはいえ、明朝再び同じ女から起こされることだけは避けなければならない。

 泣き落としが通じないと気付いたのか、女はしゃくりあげもせずに答えた。

「軽いときには墨壷をひっくり返したり、本を全部床に落としたり。
 魚を焼いていたらそれを蛙と取り替えてみたり。
 蛙よ、蛙の丸焼き。ああ、思い出しただけでゾっとする。
 酷いときには私の首に紐を巻きつけて殺そうとするんですっ」

 言われて見てみれば確かに、首に紐の跡が残っている。

 しかし、そこにいる子供の霊が最初の3つは自分の仕業だが、4つ目は絶対に違うと龍星に告げた。

 居心地の良い場所を自ら無くそうとするというのは、確かに矛盾していた。