砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

「気丈だな」

 左大臣家の客間で、眠ったまま医師の手当を受けている毬を見て、雅之が言う。

「全くだ」

 これには龍星も同意した。

 妖怪退治には慣れている二人だが、こういうとき巻き込まれた第三者は必要以上に混乱を起こし、泣き、助けてくれるものに深く頼る。
 それが常だというのに。

 毬は泣くことも助けを求めることもなく、一人で必死に戦った上、龍星の身を、雅之の心を案じたのだ。

 これを気丈でなく、なんと言おうか。

「……龍星、俺は彼女に何をしたのだ?」

 雅之が恐る恐る口を開く。

「正確なところは姫に確認するほかないが……

 察するに、口説くとか、落とすとか押し倒すとか。

 そういった類のことだろ」

 龍星は顔色一つ変えず、さらりと言う。
 が、言われた雅之のほうは、分かりやすく狼狽した。