砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

 あまりにも突拍子ない話だが、毬は黙って耳を傾ける。


「それが真実だからか、それともその話に付け込んでいるのか、物心がついた頃からあいつは近くにいて、ことあるごとに俺を敵対視してるんだ」

「強いのね」

「あるいは幻覚でそう思わされているだけなのかも。
 蛍だって、普通の虫なんだよ」

 龍星は飛び交う蛍の一匹をその手に掴んだ。

「まあ、綺麗」

 毬は瞳を輝かせてそれを見つめた。

 近くで見れば、それは確かに虫だった。

 死人の魂でもなければ、星の欠片でもなく。



 ぼう、と、淡い光を放って蛍は龍星の手を放れる。