砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

「龍星っ」

 遠くから響いてきた雅之の呼び声に、龍星は我に返った。
 屋敷の中というのに辺り一面、白い霞がかかっている。

……幻霧(げんむ)か


 巻き込まれた人に幻を見せ、その心を惑わせる白く濃い霧だ。


 目の前にはもう妖狐の姿はなく、律が呆けて座りこんでいた。


「毬は?」

 龍星は声がした方に目をやる。

「消えた。霧が立ちこめてきたから手を掴もうとしたんだが……」

 雅之の辛そうな発言に、龍星は頭を抑えた。
 失態だ。

 あのキツネの罠にまんまとはまってしまったのだ。