砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

「龍?」

 訝しげに見上げる毬に、龍星が鋭く言った。

「駄目だ。
 彼は人ではない」

「何言ってるの?だって、足あるのに」

「物の怪にだって足くらいある。
 ろくろ首に傘おばけ、妖怪になったキツネや猫又にも足はある」

「酷いこと言わないで。
 太一は、」

「真竜」

 毬の言葉をさえぎって太一が名を呼んだ。
 ありったけの念をこめて。

「―――くっ」

 刹那、思いがけず身体を走る衝撃に驚いて、毬が苦しむ声をあげる。
 眉間に深い皺が寄る。

「一緒に大人になるって約束しただろ?」

 少年が悲鳴に似た叫び声をあげた。

 龍星は諦めて毬の前へと歩み出る。
 手を放すと、印を結び、呪を唱え始めた。

「滅」

 長い呪の後、最後にそういうと、太一は煙のように姿を消した。

「……して、どうしてよっ。

 折角友達になれたのにっ」

 龍星の隣で、ようやく呼吸が自由になった毬は泣きながら非難の声をあげた。