卓上彼氏







「お母さん無事みたいで良かったね!」




ちょうどひとけのない細長い通路にさしかかったとき、ヨクの声がした。







「今までなんで呼びかけても出てくれなかったの?!」




あまりの私の気迫にヨクは目を見開いた。




「…ごめんな、他の方で力使ってて、みかみの世界と通信できてなかったみたいだ。みかみの呼びかけ、気づかなかった。あんまり大きい力使うと、一度にたくさん何かすることはできないらしい」






「…何に力使ってたかなんて知ってるよ…。信号機、操作してたのヨクでしょ?」





「……ああ」




決まり悪そうにヨクはうつむく。





「あんなこと頼んでないよ!!なんであんな勝手なことしたの?!たくさんの人に迷惑かけたんだよ?!私そんなの望んでない!!!」





脳裏に先程の映像が流れる。



ヨクは顔をあげた。




「…俺だってこんな大事になるとは思わなかったんだ…ただみかみを早く病院に連れていってあげたくて……ごめん」





「なにそれ?!私のせいってこと?!?!」




「違う、そんなこと言ってるんじゃ…」




「もういいから!何も聞きたくない!!ヨクがそんな周りを考えない人だとは思わなかった!ガッカリ!!もう私の目の前に出て来ないで!!!」





「…………わかった」







ヨクはそれっきり、画面から消えた。