「――――藤堂くん…」
嫌々私は振り返る。
あぁ、今こうしてこの瞬間も彼は私のことを『ヲタクきもい』『ネクラだ』とか思って見下しているんだろうか。
マイナスな考えばかりが浮かぶ。
「お前さ、昨日…その、なんで遅刻した?」
何を言われるかと構えていただけあって、拍子抜けした。
「なんでって…寝坊だけど」
今鏡をみたら、きっとあからさまに嫌そうな顔してるんだろうなーってくらいの表情で藤堂くんに応えた。
「ホントに、寝坊?」
――――ホントに、って、なんでそんなこと……
「本当だよ寝坊しちゃったの」
実はヨクという彼氏ができまして、なんて話絶対できないと思った。
二次元の彼氏なんてバレたらそれこそ終わりだ。
「~~~~~~~っはーーーーっ。良かった~~~~~~っ」
藤堂くんはいきなりその場にしゃがみ込んだかと思うと、両手で顔を覆って前髪をくしゃくしゃっとした。
「えっ、ちょ、どうしたの?!」
「―――――ごめん」
それは、突然の謝罪だった。
「俺さ、花園のこと傷つけるつもりじゃなかったんだ。あんなに怒ると思わなくて……てか、泣かれるとも思ってなかった」
むしろ藤堂くんが今にも泣きそうに顔をあげた。
「それで、反省してたら次の日お前朝来ないしさ、無断で遅刻してきたからガチで俺が言ったこと気にしてるんじゃないかってすっげ不安になって………」
藤堂くんはしゃがみ込んだまま横を向いた。
「俺なんであんな言い方しかできなかったんだろーってずっと考えてた。あの言い方じゃお前に嫌がらせしてるみたいだったよな………なんか俺、花園に話しかけようとしたらついからかいたくなっちゃって………」
—————なんてストレートに気持ちをぶつけてくるんだろう。
あんまり藤堂くんが素直に気持ちをさらけ出してくるものだから、イライラしていた気持ちも次第におさまってきた。


