トゥルルルル、トゥルルルル…
朝食を摂っている時に、突然家の電話が鳴った。
こんなに朝早くから誰だろうと思って受話器を取ると、それは父からだった。
簡単な挨拶を済ませると、久しぶりすぎて言葉も出ない私をよそに父は続けた。
「仕事で休暇がとれてな。急きょ今月の27日に帰ろうと思う」
「………!!
お父さん、帰ってこられるの?!?!しかも27日?!」
「28日はみかみの誕生日だから、丁度良かった。久しぶりにケーキでも食べるか」
「うん!うんわかった!待ってる!!……はい、うん…そうそう………学校これからだよ………うん!それじゃ……」
ガチャリ。
喜びに震える手で受話器を置いた。
嬉しかった、本当に嬉しかった。
「お父さん、お父さんが帰ってくる!!!」
さっきから私の朝食風景をリビングのテレビから眺めていたヨクに話しかける。
「ロサンゼルスに出張してたお父さんだっけ、帰ってくるんだ」
ヨクも自分のことのように高揚していた。
「お父さんが私の誕生日を祝ってくれるなんてホントに久しぶりのことなの!!!それに去年の誕生日なんて独りだったし……」
とにかく、私は天にも昇るような気持ちだった。
あのお父さんが、珍しく帰ってくる!!
「……………」
ヨクが切なげな目をして私を見つめていることに気が付いた。
「?」
「みかみの笑顔ってとっても可愛いんだなって思った。こんなに幸せそうなみかみ見るの初めてだ。ホント天使みたいだよ」
「なっ…」
私は顔が紅くなるのを隠すかのように慌てて頬に両手をやった。
こんなドキドキするようなセリフ、さらっと言えちゃうから驚きだ。
さすが彼氏。
「あ、どうせ彼氏の仕事としてのセリフだとか思ったんだろ」
ヨクは頬をふくらませた。
「今のは、俺の本心だから」
「はいはいありがとう!」
こっちが本気で照れていることがばれるのが恥ずかしくて、その時は顔を背けて適当に返事をしてしまった。


